障子が開け放たれた書院には長等山を借景にした庭園、心地のいい風と音楽。自然と一体化した大空間に奥田博土さんのダイナミックな陶芸作品と中島省三さんの琵琶湖と空の写真が飾られています。
古琵琶湖層の風化花崗岩を赤松で焼成した大壺、大壺の破片を再焼成、半磁器土の角棒と組んだ作品、異なる土を独特の練り付けロクロ技法で仕上げた作品など。水を張った作品は泉に見たて、庭の池水へのつながりを表しているとのこと。
日課は三井寺への散歩。三井寺展望台から見える琵琶湖、伊吹山や鈴鹿の山並みのほか、空撮での琵琶湖など。時代や季節により、日々移り行くさまざまな琵琶湖と雲の様子をおさめた写真を多数展示。
(展示場で語らう奥田さん《写真左》と中島さん《写真右》)
奥田さんは10代で芸術家の故・岡本太郎氏と太陽の塔(1970年日本万博博覧会会場)の共同制作を行い、岡本さんの影響を強く受けたと話します。
「何事にも“なぜ”という疑問を持ち、追求することでアートのひらめきが生まれる。芸術とは誰かに教わるものではなく、各々の自由な発想を表現すること。 半世紀以上にのぼる作陶だが、年々楽しく今が一番おもしろい」とのこと。
「5月末までの会期中、庭の緑は刻々と変わる。何度来てもらっても違ったアート空間を楽しめる」と奥田さん。美術館とはひと味違った、自然と共存するアートが楽しめる展覧会。時間を忘れ、自らの心の趣くままに作品を鑑賞してみては。