岡山県産の酒米・備前雄町を使った日本酒は、 濃醇で深い旨味を感じ、日本酒“つう”をもうならせる 滋賀県産の酒米・渡船は、ほのかな甘みと軽やかな旨味、 ややドライで日本酒初心者にもおすすめ。 手間暇をかけ、自然の力を最大限に引き出した上原酒造の日本酒「不老泉」。
琵琶湖北西部に位置する高島市新旭町。町の各所では比良山系の伏流水がこんこんと湧き出し、古くから「かばた(川端)」と呼ばれる水場で生活用水として利用されてきた。
上原酒造は江戸末期(1862年)の創業以来、豊かな水量を誇る敷地内の湧水を使って酒づくりを続けてきた。
「この水があったからこそ今がある。飲料水としてもおいしいやわらかな水で、洗米から仕込みまですべて湧水を使っている」と話すのは、6代目当主、上原 績(いさお)さん。
軟水は硬水に比べ発酵が穏やかになるため、長期低温発酵の高度な技術が必要になる。上原酒造は手間や時間をかけながらも、昔ながらの醸造法を守り続ける全国でも稀有な蔵元だ。
竹を配した重厚な扉の向こうは、100年以上使われてきた酒蔵。黒光りする木の柱、土壁、ほのかな麹の香りに包まれた神聖な空間に40ほどのタンクが並ぶ。
木製樽と鉄製タンクでは、同じ原料を仕込んでも味にはっきりと違いが出るという。「木樽仕込みは最初の温度管理が難しいが、保温力が高い。なぜか口当たりがまろやかになる」と上原さん。
目指す日本酒は、濃醇・旨口。淡麗辛口がもてはやされた近年でもブレることはなかった。天然の乳酸菌や蔵付酵母菌を取り込む山廃仕込みでは、発酵が進むにつれ醪は高々と泡立つ。管理のしやすい泡なし酵母に比べ、発酵の見極めが難しく、タンク容量の3分の2程度の量でしか仕込むことができない。それでも米の味をじっくりと引き出すことができる天然酵母にこだわる。
また、酒と酒粕を分ける上槽工程では、現在、希少となった木槽(きぶね)天秤しぼりで行う。10時間ほどで搾れる機械搾りに対し2日半かかるが、搾り過ぎず酒にストレスを極力かけないためだという。
木製の蒸し器や樽、木槽などは暑い真夏の時季に柿渋を塗布する。消毒や殺菌、カビ対策に加え、メンテナンスには大阪・堺の職人を訪ねるとのこと。大型の精米機はトラブルも多い。あらゆる工程で手間やコストがかかるため、年間生産量は400石と小規模だ。それでもこのスタイルを「続ける」という。
「自分のペースで、力のあるしっかりとした味の酒をつくりたい。ようやく“濃醇・旨口、これが上原酒造の味”と言える酒がつくれるようになった」と上原社長。
個性を際立たせた上原酒造の“不老泉”。日本酒を飲みなれた人こそ、じっくり味わってみるべき酒ではないだろうか。
住所 | 〒520-1512 滋賀県高島市新旭町太田1524 |
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TEL | 0740-25-2075 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
店舗情報 | ※7月下旬、「初呑み切り」として50種類前後の商品の利き酒会を開催予定。 詳細は上原酒造にお問合せください。 |