清流の水音が響く深い山あい。形状の異なる丸い茶樹が特徴的な東近江市・政所の茶畑。種から育った在来種を産地全体で完全無農薬栽培するという、国内でも希少な茶産地となっている。現代の均一化された茶とは正反対の、個性あふれる茶樹が奏でる素朴で奥深い政所茶。生産地の今とは。
東近江市、鈴鹿山脈の山あいに広がる集落「政所」。記録的な暑さが続く7月末、照り付ける太陽の下、数組の親子連れが元気に茶摘みをしている。この日は、政所茶の栽培、PR活動を行う「政所茶縁の会」主催の“二番茶を使った手摘み手揉み紅茶づくり体験”の日。「今日、摘んだお茶の木は、100歳を超えています。別の茶畑には滋賀県指定自然記念物に指定されている300歳の大茶樹もあり、その木も現役で茶葉を収穫しています」と話す同会代表の山形 蓮さん。
地質、昼夜の温度差、川からの霧、自然の力で茶葉が育つ政所は、古くから茶の栽培に適していた。その歴史は、600年以上前の室町時代から。石田三成が幼少期、豊臣秀吉に三度、献茶したとされる“三献の茶”の逸話でも知られている。
高度成長期、国内では茶栽培の効率化が進み、画一化された茶葉が大量に生産されるようになる。そんな中でも政所では、在来種の有機栽培、手摘みという伝統的な栽培法を守り継いできた。大学時代のフィールドワークで政所茶に出会った山形さんは、政所茶の歴史をつなぐため政所に移住し、政所茶を守る活動を続けている。
横に枝を大きく広げる樹齢300年といわれる大茶樹は、90歳になる白木駒治さんが先祖から継承したもの。駒治さんは茶栽培の傍ら、この地の茶業を守るべく活動する山形さんをはじめとする諸団体を受け入れ、茶栽培の指導も行ってきた。
茶摘みが終わると夏は畑修理(草取りとススキ敷)、秋肥作業のあと来年のためのススキの備蓄作業、農家から譲ってもらった餅藁をすぐり、冬に菰を編む。手間暇かけた自然農法の茶栽培には休みがなく、一年を通して重労働。高齢の駒治さんの指導の元、家族の協力を得ながら茶栽培を担う娘の白木佳代子さんは「政所茶は在来種の有機栽培(無農薬栽培)。地中に根を張り、清らかな水と栄養分をふんだんに吸収するのでお茶本来の味がします。また、農家ごとに加工するのでワインのテロワールのように味が異なるのも政所茶の醍醐味です」と話す。また「茶工場の老朽化、担い手不足と課題はありますが、政所茶生産振興会の若手メンバーが協力し、課題解決に取り組んでいます」と笑顔を見せる。
政所茶の購入は、政所近くの道の駅「奥永源寺渓流の里」がおすすめ。2004年に閉校となった旧政所中学校の校舎を再活用したユニークな道の駅で、地域で採れた野菜や果物、川魚の総菜、永源寺名物の蒟蒻など特産物も豊富に取り扱う。また、政所茶を使った茶蕎麦やソフトクリームのほか、永源寺ダムを模したダムカレーなど食事も楽しめる。さらに愛知川や琵琶湖の渓流魚水族館や登山情報コーナーなどもあり、幅広い世代に人気のスポットとなっている。
住所 | 滋賀県東近江市政所町 |
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WEB | https://www.instagram.com/cha.en.musubi/ |
店舗情報 | 茶縁むすびのInstagramではニュースやイベント情報をアップ! ※政所茶の購入 ・道の駅「奥永源寺渓流の里」 ・中川誠盛堂茶舗(大津市中央3-1-35) |
住所 | 滋賀県東近江市蓼畑町510 |
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WEB | https://okueigenji-keiryunosato.com/ |
営業時間 | 4月~11月/9:00~17:30 12月~3月/9:00~16:30 |
定休日 | 火曜日(火曜が祝日の場合は翌水曜日) 年末年始 |