県内産の茶の約9割を生産する甲賀市土山。
日照時間の長いなだらかな丘陵地で育つ茶葉は、長く分厚い。
新芽の育成期間に黒い覆いをかぶせる「かぶせ茶」の生産が盛んで、その味わいは渋みが抑えられ、まろやかなうまみが特徴的。
土山では茶農家が、それぞれの立場で後世に茶業を引き継ごうと、懸命な努力を重ねている。
和紅茶で脚光を浴びる個人農家・中村農園の中村哲三さんもそのうちの一人だ。
甲賀市土山の旧東海道沿いで、農業を営む中村農園。お茶の機械を静岡県から購入したという古い記録が見つかり、少なくとも100年以上は茶栽培を行ってきた歴史がある。
中村農園の5代目、中村哲三さんは、農業系の学校を卒業して家業に入り、父に習いながら徐々に仕事を任せてもらったという。農業を始めてからしばらくは、“毎年同じ仕事をこなしている”と感じていたそう。転機となったのは、5~6年前から取り組んだ和紅茶づくり。品評会で高い評価を得て注目を集めた。和紅茶の入賞後は、県内外の農家とつながり、茶樹の栽培技術や紅茶の加工法など、さまざまな刺激を受けた。それが、緑茶づくりにも活かされたとのこと。
「米や野菜などと違って、お茶は栽培だけで終わらず、製茶までを生産者が担います。加工によって、多様な可能性が広がるお茶づくり。今が一番楽しい」と中村さん。
中村さんは、生産した茶葉をパッケージし、インターネット通販や県内外のマルシェに出店して自ら販売している。店頭でお客さんとふれ合い、直接、生の声を聞くことで気づいたことがたくさんあったそう。
一般的には緑色がきれいな茶、うま味の強い茶が流行りとされているが、色にそこまでこだわっていない人や、うまみより渋みを求めている人に出会うことも。ニーズが実に多様化していることを知り、それが中村農園の方向性を考えるヒントにもなった。
茶の国内消費量は減少し続け、資材は高騰している。日本の茶業界全体で厳しい状況が続いているが、海外輸出にシフトした農家は売上を伸ばしている。
「個人農家は、特徴のある味で(生き残れる)。同じ茶の木から緑茶も紅茶もウーロン茶もできる。“原料(茶)が良くなければ、良いお茶はできない”との父の教えを胸に、茶葉の品質向上と個性を際立たせる多様な茶を今後も追求していきたい」と笑顔を見せる中村さん。
中村農園の紅茶は、農園近くの北欧風カフェレストラン「HYGGE CAFÉ&GARDEN」で味わうことができる。北欧の豊かな暮らしの合言葉「HYGGE」(ヒュッゲ)にちなんだお店は、旧東海道沿いの古民家を青木工務店がリノベーション。昔ながらの木のぬくもりはそのままに、開放的で落ち着きのある店内。デンマークの伝統料理のほか、パスタやリゾットが楽しめるランチメニュー、旬の素材やお茶を使った手作りケーキが人気を集めている。
店名の通り、豊かな時間が流れる居心地の良いカフェ。一人でふらりと、あるいは家族や大切な人と、ゆったりとくつろいでみては。
住所 | 滋賀県甲賀市土山町市場204 |
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TEL | 080-8147-3666 |
WEB | https://www.nakamuranouen.jp/ |
店舗情報 | ・公式サイトの通信版売 ・中川誠盛堂茶舗(大津市中央3-1-35) ・北欧風カフェレストラン「HYUGGE CAFÉ&GARDEN」 ・道の駅あいの土山 ※2025年春までリニューアル工 事中。 そのほか、県内外のマルシェに出店 |
住所 | 滋賀県甲賀市土山町大野2120 |
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TEL | 0748-60-9623 |
WEB | https://www.hygge-cg.cafe/ |
営業時間 | 11:00~21:00(ランチL.O 14:00 ディナーL.O 20:00) |
定休日 | 水曜日 |