創業は1658年。「浅茅生」の銘柄は、1677年、 後水尾天皇皇子聖護院宮道寛親王から賜った和歌から命名されたもの。 300年以上のときを超え受け継がれた老舗蔵元の今とは
大津の丸屋町商店街にある平井商店。創業は1658年、江戸時代初期という老舗蔵元。酒造りの繁忙期、歴史を重ねた酒蔵では、蔵人たちが蒸しあがった米を小気味良く麹室やタンクへ運ぶ。
「1本1本悔いのないように仕込みたい」と力強く話すのは、杜氏の平井弘子さん。17代目当主の平井八兵衞さんは、蔵人たちにお手本を示しながら現在も酒造りの中心を担っている。
平井商店の長い歴史の中では、時代に合わせたスタイルで酒造りが行われてきた。昭和の終わりまでは桶売りをしていたが、八兵衞さんの代で「自分の酒が造りたい」と方針転換。冬の間、杜氏を雇用する従来の酒造りをやめ、自ら杜氏となり、地元の人たちを雇用してオリジナルの酒造りを始めた。現在、県内の“蔵元杜氏”は増えたが、平井商店はその先駆けとなった。
そして昨年、再び昔ながらの「生酛(きもと)造り」を復活させた。米と米麹をすり潰し、乳酸菌を繁殖させる伝統製法は「時間と手間がかかるけれど、味に確かな違いが出る。お米の旨味が最大限に引き出され、深みのある複雑な味わい」と弘子さん。
弘子さんが酒造りの世界に入ったきっかけは急な事情からだった。大学で建築を専攻し、卒業後の就職活動をしていたときに祖父が亡くなった。祖母の世話を母がするようになり、家業の手が足りなくなった。家族や家業への想い、モノづくりが好きだったこともあり、弘子さんは覚悟を決めた。父に習いながら修行を積み、杜氏となってからは女性ならではの繊細は感覚を酒造りに活かした。自身の経験から「お酒に弱い人や女性にも気軽に楽しんでもらえるお酒を」と、飲みやすく改良したにごり酒「湖雪」は、ねらい通り女性ファンを増やしている。
コロナ禍で厳しい局面を迎え、近年はやりたいことができなかった。それでも「経営者として慎重に見極めつつ、お米の種類や製法の違いによる味の変化を追求したい」と今後につなげる攻めの精神は忘れていない。
豊かな知識と経験を持つ父、京都の酒造会社に勤めた経験があり、お酒が大好きな夫・将太郎さん。家族の絆に支えられた平井商店は、次代に向けた新たな歴史を刻んでいる。
住所 | 〒520-0043 滋賀県 大津市中央1-2-33 |
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TEL | 077-522-1277 |
営業時間 | 10:00~18:30 |
定休日 | 不定休 |