清らかな水、田畑、生産者たちの思い。 材料を選ぶ9代目は、酒づくりに「意味」を見出す。 美しい日本の原風景を残す、高島・畑地区の棚田。 農業従事者の高齢化が進み、「できる人ができることを」と、地域の人々を中心に保全活動が行われている。 この棚田のコシヒカリを100%使った福井弥平商店の純米酒は、そんな地域の人々の思いに寄り添う。
「酒づくりに使う素材には理由がある」と話すのは、「萩乃露」の蔵元、福井弥平商店9代目・福井 毅さん。1999年に日本の棚田百選(農林水産省)に選定された畑地区の棚田米を使い続けるのもその理由の一つだ。福井さんが9代目を引き継いだ20年前、美しい畑地区の棚田は、見学や撮影に訪れる人々から注目を集めていたものの、農家の減少に伴い減反が進んでいた。この地で先祖から農業を営み、「畑の棚田保存会」のリーダー的な役割を果たしていた林 典男さんと協力し、「萩乃露」シリーズに畑地区の棚田米(コシヒカリ)を100%使用したブランドを加えた。「昼夜の寒暖の差が大きく、水も冷たいため、でんぷんをため込んだ米は甘い。酒米としても非常に上質だ」と福井さん。「畑地区は土地の魅力、人の魅力が詰まっている。棚田米は市場に出回らないが、日本酒になることで存在感を表し、里山保全の一端を担うことができる」とのこと。この10年で棚田米以外にも地域の農家と契約栽培を進め、現在使用する酒米は地元産が8割に。「お米それぞれの良さがある。それを使う理由は何か…そこを大事にしていきたい」。
福井弥平商店は、高島・勝野にて江戸中期から260年にわたり酒づくりを続けてきた。豊かな自然、比良山系のやわらかな伏流水に恵まれ、水に従い、水の良さを活かしてきた。近年はコロナ禍で酒のニーズが変化、家飲みのバリエーションを求める声を受け、多種多様な米や果実を使用するなど、この2年で約50種類の新たな酒をリリースした。
「やりたいことはその時々で変わってくる。本来、お酒は楽しくておいしいもの。つくり手もワクワクしないとダメ。僕はたくさんの人でつくった方がいいと思っているので、うちは企画も酒づくりもスタッフみんなが参加している」。
変わらぬ水や製法、新たな味と現代技術。巧みに使い分ける福井弥平商店の真ん中には、“進むべき理由があれば、躊躇はしない”という9代目のブレない信念がある。
3月、まだ雪の残る畑地区の棚田。春は水田の幻想的は風景が広がる。
「耕作放棄地が増え、20年後はどうなっているかわからないが、自分の代はここでの米づくりを守りたい」と林さん(72歳)。
「できる限り(酒を、米を)つくり続けるべきだと思う。人は何に価値を見出すかわからない。活動を続けるうちに、誰かがこの地の新しい価値を見出すかもしれない」と福井さん。
四季の幸、自家製の米
老若男女に親しまれる店
春は山菜や氷魚、夏は小鮎、秋冬は獅子鍋。地元でとれる新鮮な四季の幸を使った料理と自家製米が評判。希少な自然の恵みを良心価格で提供する穴場的な店として、遠方から足繁く通う常連客も。ボリューム満点のお得な日替わり定食をはじめ、揚げ物、麺類、丼物、刺身など普段使いに利用できるメニューもそろい、子どもから大人まで地元民の憩いの場に。季節の天ぷらや一品小鉢で、福井弥平商店の酒を気軽に楽しんでみては。
住所 | 〒520-1121 滋賀県高島市勝野1387-1 |
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TEL | 0740-36-1011 |
WEB | https://www.haginotsuyu.co.jp/ |
営業時間 | HP参照 |
定休日 | HP参照 |