琵琶湖畔、海津大崎の桜とともに― 酒米「吟吹雪」を100%使ったコクと旨味がつまった純米酒。 佃煮や煮物、洋食のシチューなど濃い味の日常食を引き立てながらも、料理に負けない味わい。
「地元の漁師や職人さんらに好んでもらえるような、ガツンと飲みごたえのある、ボディーのしっかりとした酒をつくってきた」と話すのは、吉田酒造の吉田肇さん(第4代蔵元)。
京都と北陸を結び、古くから湖上交通の要衝であった高島市・海津。湖岸には風浪被害を防ぐために築かれた江戸時代の石積みが残り、漁業はもちろん、人や物を運ぶ丸子船や蒸気船が発着する港町としてにぎわっていた。吉田酒造は、この海津の湖畔で明治10年から地域に根差した酒づくりを続けている。
「近年は生酒や大吟醸など、手の込んだ日本酒がブームになり、トレンドに沿った上品な酒をつくってみたが、地元の人たちには“旨いが、たよりない”と言われた。以来、湖魚やジビエなど地元で親しまれる食材に合ったベーシックな酒づくりを心掛けている」。
100年以上歴史を重ねる酒蔵には、1年2年、長いもので5年10年と熟成された酒が眠っている。年月を重ね味がのった酒は、濃醇な味わい。新酒や若い酒にブレンドし、味に深みを持たせることもあるという。
「淡く上品な味わいの日本酒は、料理の邪魔はしないかもしれないが、口直しに過ぎなくなることもある」と吉田さん。
「たとえば滋賀の特産・近江牛のたたき、これからの季節だったら氷魚の佃煮など、酒の肴と酒とのマッチングを意識し、料理に負けない個性のある酒質を合わせると楽しさが広がる」。
過去には県内のホテルとタイアップし、料理に合う日本酒を選び、温度、酒器などにもこだわりを持たせて楽しんでもらう企画に参加。コロナ以前の春には蔵の中庭を開放し、打ち立ての蕎麦と酒、酒のシャーベットなどユニークなメニューを楽しむ花見イベントも開催した。
「昭和までは規制が強く、どの日本酒を飲んでも似ていたことで消費者離れを加速させた。しかし平成に入ってからは、酒造りの自由度が広がり、蔵元の世代交代などで新しい挑戦をする蔵も増えていった。これからもっとおもしろくなる」と笑顔の吉田さん。
コロナ禍で飲み会が減った一方で家飲みが増え、日本酒にスダチや炭酸を加えるなどカスタマイズして楽しむ人も出てきた。また、海外では日本酒への関心が高く、輸出が増え、海外産の日本酒まで誕生し、その斬新な味わい方が逆輸入される現象も。
「日本酒の敷居が低くなったことはいいこと。食文化や時代の変化による軌道修正は必要だが、地域に認められる酒づくりを続けながら、日本酒の多様な楽しみ方を提案し、日本酒の魅力をふくらませていきたい」。
住所 | 〒520-1811 滋賀県高島市マキノ町海津2292 |
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