日本茶の起源は滋賀にあると伝えられています。 1200年以上前、最澄が中国から茶の種を持ち帰り、植えたとされる最古の茶園「日吉茶園」が、滋賀県大津市坂本に現存しています。 滋賀での歴史が深く、古来より人々の日常に欠かせないものとして受け継がれてきた日本茶。 今回は江戸時代から続く大津市の老舗茶舗と、県内最大級の茶畑を有する甲賀市土山の生産者を訪ねました。
「煎茶の品質においては、滋賀が一番です」と話すのは、大津市の旧東海道沿いに160年以上の歴史を重ねる老舗・中川誠盛堂茶舗の5代目主人・中川 武さん。
国内では、静岡、鹿児島、三重が日本茶栽培の70%を占めていますが、茶の品評会でトップ10入りを果たす茶葉は、ほとんどが滋賀県産とのこと。茶葉は業者を経るとブレンドされ、添加物が加えられることも。中川誠盛堂では「本物の味を知ってもらいたい」と、中川さんが選び抜いた茶を生産地・生産者ごとに分ける“シングルオリジン”、添加物無添加で販売しています。
「信楽の朝宮は京都との県境に位置し、茶の栽培に非常に適した気候で、今でも最高級品質の茶葉が栽培されています。永源寺の政所では樹齢300年を超える大茶木もあり、栽培量は少ないながら手摘みを中心に優れたお茶が作られています。また、栽培量・栽培面積ともに県内の9割を占める土山では、かぶせ茶や碾茶の栽培が盛んです。ちょうどこの春先、当店の“赤ちゃん番茶”用の茶葉がグリーンティ土山さんで刈り取られています」。
甲賀市土山、3月末の茶畑。新芽に霜がかからないよう、地表付近の空気を動かす防霜ファンが等間隔に設置されています。長雨が止んだ晴天の日、県内最大の経営規模で土山茶を生産するグリーンティ土山では、春番茶用の“おくゆたか”という旨味の強い品種の摘採が行われていました。
「冬の間の耐寒、春先の寒暖差で茶葉や茎が分厚くなり、濃い緑色に。糖度や旨味がアップしています。土山の茶は全般的に“煎がきく”(2煎目、3煎目でもおいしい)と言われています」と代表理事の藤村春樹さん。茶生産者の収入の中心は4月末から5月の新茶シーズン。3月は茶の木に施肥を行い、新芽の生育を促します。そのため、春番茶の摘採は、限られた茶の木で一週間という非常に短い期間のみ実施され、収穫量が極めて少ない貴重なものになっています。
30年以上前、グリーンティ土山は5軒の農家が集まってスタートしました。現在、当時からの農家は、藤村さん一軒のみとなり、他は農業大学出身者や地域の若者を中心とする個人の農業者が14人所属しています。製茶工場はもちろん、畑の利用も管理も共同で行うという、全国的にも珍しい組織を展開しています。
ペットボトルのお茶が普及し、急須でお茶を淹れる習慣が減っています。藤村さんが茶業に携わるころから、煎茶の消費量は右肩下がりでした。コロナ以後は煎茶の需要が戻らず、代わりにスイーツなどに利用される碾茶(抹茶の元)の需要が国内外ともに急拡大しています。
それでも「香り、旨味、お茶の味が一番わかるのが煎茶。嗜好品として評価されれば、また上がっていけるのではないか」と藤村さん。業界の将来を見据え、組合仲間を若い世代に絞り、煎茶やかぶせ茶の栽培技術や製茶技術を伝承し続けています。
住所 | 〒520-0043 滋賀県大津市中央3丁目1-35 |
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TEL | 077-522-2555 |
WEB | https://seiseido.com/ |
営業時間 | 9:00~19:00 |
定休日 | 日曜日・祝日 |
住所 | 〒528-0235 滋賀県甲賀市土山町大野6217 |
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TEL | 0748-67-1331 |
WEB | https://g-t.or.jp/ |
店舗情報 | ※オリジナル商品は公式サイトより通販で購入可 |