滋賀県甲賀市信楽町朝宮。平安時代、最澄が中国から持ち帰った茶種を比叡山の麓の日吉茶園とここ朝宮にまいたと伝えられ、朝宮は日本のお茶発祥の地とされる。
歴史の深い朝宮の茶は、宇治茶(京都)、川根茶(静岡)、本山茶(静岡)、狭山茶(埼玉)とともに日本5大銘茶に数えられ、中でも朝宮茶は緑茶の最高峰と言われている。
京都との県境に位置する甲賀市信楽町の朝宮地区。高地の寒暖差に加え、かつて古代琵琶湖だった場所であるため、ミネラルが豊富に含まれる土が、お茶作りや特産品(信楽焼)の陶器作りに適している。
深い谷に整然と続く美しい茶畑「武田製茶農場・美谷茶園」。昭和40年代まで養蚕業を営んでいたが、農業構造改善事業をきっかけに茶業へ。先代から茶畑を受け継いだ武田達生さんは、この谷と少し離れた集団茶園でかぶせ茶、やぶきた茶、紅茶など19品種の茶を栽培している。
大型の機械が入れられない急こう配、農作業のほとんどが人の手による過酷なもの。それでも茶栽培40年、丹精込めて作られる武田さんの茶葉は、県内外の茶業家や茶の品評会で高い評価を得る。「収穫したてのような、スッとした爽やかな香り。それが朝宮茶の持ち味」と武田さん。
茶にもはやりがあり、求められる茶が変わってきているという。「煎茶の消費量が下がる一方で、若い人たちの間で茶にこだわることが格好いいという風潮も出てきた。いずれまた、煎茶の価値が上がるかもしれない」と武田さん。
12~13年前から紅茶づくりをスタート。現在、朝宮の茶農家でただ一人、紅茶生産専用プラントを設立し、本格的に紅茶づくりに取り組んでいる。煎茶の摘採期が終わればすぐに紅茶の摘採期。摘み取った茶葉を精揉(乾燥)し、萎凋(発酵)する。最適なタイミングを逃さないため、製茶工場は深夜2時でも明かりが灯る。
「体力的にはかなりキツイ」と武田さん。それでも年々良い紅茶ができ、「国産紅茶グランプリ」で令和4年にはシルバーアワード受賞し、令和5年には純グランプリに輝いた。「楽しいからやる。それが一番。国産烏龍茶にも注目が当たり始めている。いつか作ってみたい」。武田さんの挑戦はまだまだ続く。
上朝宮の422号線沿いで営業し、35年というお茶とぜんざいの店「お茶の洞之園」。朝宮茶をはじめ、ぜんざいやわらび餅、草餅、おはぎなどの自家製和スイーツのほか、夏は種類豊富なかき氷が人気を集める。店内では冷たいほうじ茶、寒い時季は急須で煎茶がふるまわれ、店内飲食の待ち時間がほっこりと癒される。土日祝日は混み合うが、平日の午前中は比較的人が少なく、おすすめ。茶や陶器を求め、信楽を訪れたらぜひ休憩に立ち寄ってみては。
住所 | 滋賀県甲賀市信楽町宮尻910 |
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TEL | 0748-84-0431 |
店舗情報 | ※武田製茶の茶葉の購入先 中川誠盛堂茶舗 大津市中央3-1-35 TEL:077-522-2555 https://seiseido.com/ |
住所 | 滋賀県甲賀市信楽町上朝宮249-1 |
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TEL | 0748-84-0115 |
営業時間 | 9:00~17:30(L.O16:50) |
定休日 | 水曜日(祝日除く)、第2木曜日 |